1. 目的
MRI装置の故障、不具合、異常停止、停電後異常、冷却系異常などが発生した際に、
患者安全を最優先とし、二次被害を防止しながら、適切な初期対応・報告・復旧判断を行うことを目的とする。
2. 対象となる事象
以下のような場合を本手順の対象とする。
- MRI装置が正常に起動しない
- 検査中に装置エラーが発生した
- 寝台が動作しない
- 画像に明らかな異常がある
- 冷却装置に異常がある
- 酸素濃度計や警報機器に異常がある
- 停電後、装置が正常復旧しない
- 異音、異臭、発熱、煙など通常と異なる状態を認めた
- クエンチ発生、またはその疑いがある
- 災害後、装置状態の安全確認が必要である
3. 基本方針
- 患者の安全確保を最優先する
- 無理に検査を継続しない
- 必要時は速やかに患者を検査室外へ退避させる
- MRI対応機器以外を安易に持ち込まない
- 原因不明のまま再稼働しない
- 記録・報告を確実に行う
4. 初期対応フロー
4-1. 検査中に故障・異常が発生した場合
- 直ちに撮像を中止する
- 患者の呼吸、意識、苦痛の有無を確認する
- 必要に応じて患者をガントリー外へ移動する
- 処置が必要と判断した場合は、まずMRI検査室外へ退室させる
- 退室時はMRI対応車椅子またはMRI対応ストレッチャーを使用する
- 応援スタッフを呼ぶ際は、磁場環境であることを必ず注意喚起する
- 重篤時は放射線科医師へ連絡し、必要時コードブルーを要請する
4-2. 検査開始前・始業時点検・終業時点検で異常を認めた場合
- 当該装置での検査を中止する
- 異常内容を確認し記録する
- 装置責任者または担当者へ報告する
- 必要に応じてメーカーへ連絡し、点検・修理を依頼する
- 安全性が確認されるまで使用再開しない
5. 状況別対応
5-1. 装置が起動しない・正常に立ち上がらない
対応
- システム電源、冷却装置、配電盤レベルの電源状況を確認する
- 停電後であれば、所定の復旧手順に従って再立ち上げを行う
- 再起動後も正常に立ち上がらない場合は、直ちにメーカーへ連絡する
- 当日の検査予定については、責任者判断のもと延期・振替を検討する
使用再開条件
- 装置が正常に立ち上がる
- 寝台動作に問題がない
- 必要なテスト撮像で異常がない
- 安全上問題ないと判断できる
5-2. 画像異常がある
例
- ノイズが強い
- 著しいアーチファクトが出る
- 画像欠損がある
- 通常と異なる信号不良を認める
対応
- まず撮像条件、コイル接続、患者要因、周辺機器の影響を確認する
- 必要に応じてファントム撮像を行う
- 画像異常が継続する場合は当該装置の使用を中止する
- メーカー点検を依頼する
- 異常画像は保存し、記録に残す
使用再開条件
- テスト撮像で異常が解消している
- 臨床使用に支障がないことを確認している
5-3. 寝台が動作しない・患者搬送に支障がある
対応
- 無理に寝台を動かさない
- 患者が装置内にいる場合は安全に退出可能か確認する
- 必要時は応援を要請する
- 患者状態を確認しながら、MRI対応機器を用いて退室させる
- 処置が必要な場合は検査室外で実施する
- 装置使用は中止し、メーカーへ連絡する
5-4. 冷却系異常・ヘリウム関連異常
異常例
- 冷却装置停止
- 冷却システム警報
- 液体ヘリウム残量異常
- 通常と異なるポンプ音・警報音
対応
- 冷却システムの稼働状況を確認する
- 異常時は装置の継続使用を中止する
- 状況を記録し、速やかにメーカーへ連絡する
- クエンチの可能性を念頭に置き、室内安全に注意する
- 必要時は立入制限を行う
5-5. 停電後に異常がある場合
計画停電後
- 通電後60分以降に配電盤レベルの電源投入
- 冷却装置を起動し、動作を確認する
- 冷却装置電源投入30分経過後にMRI装置システム電源を投入する
- 正常起動後、寝台動作確認とファントム撮像を行う
予期せぬ停電後
- 上記の復旧手順に準じて対応する
- 正常起動しない場合、またはテスト撮像に異常がある場合は、直ちにメーカーへ連絡し、点検・修理依頼を行う
- 安全確認が完了するまで検査は再開しない
5-6. 異音・異臭・煙・発熱を認めた場合
対応
- 直ちに装置使用を中止する
- 患者がいる場合は安全に退室させる
- 火災の可能性も考慮し、施設担当へ連絡する
- 必要時は院内緊急連絡体制に従う
- 原因確認前の再使用は禁止とする
5-7. クエンチ発生時またはその疑いがある場合
最優先事項
患者の救出を最優先する
対応
- 直ちに排気ファンを作動させる
- 検査室内から患者を避難させる
- 排気ファンが作動しない場合は、酸素濃度計・酸素アラームに注意しながら低姿勢で救出する
- 酸素濃度18%以下は危険である
- 患者退避後、室内に誰もいないことを確認する
- 火災でないことを施設担当および消防署へ連絡する
- 装置周辺は安全確認が完了するまで立入制限を行う
5-8. 災害後に装置異常が疑われる場合
基本方針
- 建物、装置、冷却系、磁場環境の安全性が確認できるまでは使用しない
対応の考え方
A. 建物倒壊・破損、装置使用不能
- 現場立入の危険性を評価する
- 立入可能なら励磁状態・クエンチ有無を確認する
- 磁場が残存している場合は近づかず、立入禁止と警告表示を行う
- 磁場が消失していても、残留ヘリウムによる二次災害に注意する
B. 装置設置状況に重大な異常がある
- 装置は使用しない
- 冷却系状態を確認・記録する
- 復旧まで立入制限と警告表示を行う
- 必要時は配電盤レベルで電源遮断する
C. 建物に目立った損傷がある
- 漏電、回路損傷、火災、クエンチ、磁場漏洩に注意する
- 安全評価が完了するまで使用しない
D. 震度5弱以上で明らかな異常はないがメーカー点検待ち
- 緊急性のない検査は行わない
- 寝台動作確認、ファントム撮像を十分に行う
- 必要最小限の検査のみとし、十分な人員配置で対応する
6. 応援要請・院内連携
異常発生時は、状況に応じて以下へ連絡する。
- CT操作室スタッフ
- 放射線科医師
- 看護師
- 医療安全管理室
- GRM
- 施設担当
- 当直医または救急担当看護師
- 装置メーカー
- 必要時 消防署
7. 報告・記録
装置故障や不具合発生時は、以下を記録する。
- 発生日時
- 発生場所
- 装置名・装置番号
- 発見者
- 発生時の状況
- 患者への影響の有無
- 実施した初期対応
- 関係者への連絡内容
- メーカー連絡の有無
- 復旧状況
- 再発防止の検討内容
また、必要に応じてMRI安全管理委員会を開催し、
事例・対応策を医療安全管理室およびGRMへ報告する。
重篤な事例や対外報告が必要な場合は、PMDA、日本磁気共鳴医学会、メーカーへの報告を検討する。
8. 使用再開の判断
以下を満たすまで、原則として使用再開しない。
- 故障原因または異常内容が確認されている
- 安全性に問題がないことが確認されている
- 必要な点検・修理が完了している
- 寝台動作確認が完了している
- ファントム撮像等で画質確認が完了している
- 責任者が再開可能と判断している
9. 現場向け簡易チェックリスト
故障発生時の最初の確認
- 検査を中止した
- 患者状態を確認した
- 必要時、患者を検査室外へ退避した
- MRI対応機器で搬送した
- 応援スタッフへ磁場環境を注意喚起した
- 装置異常内容を確認・記録した
- 責任者へ報告した
- 必要時、メーカーへ連絡した
- 安全確認が済むまで使用を中止した
10. 備考
停電後、災害後、冷却系異常時は特に慎重に判断する
緊急時の処置はMRI室内ではなく、まず退室を優先する
外部から応援が入る場合は、強磁性体持込み防止の声かけを必ず行う
原因不明の不具合時は、「使えるかもしれない」で再開しない