群馬県立がんセンターの臨床MRI安全利用の指針

1.目的

2.MRI 安全管理体制

3.MRI 安全管理マニュアル

4.MRI装置の品質管理

5.停電時の対応

6.クエンチ発生時の対応

7.災害時の対応

8.安全性情報の関連学会・関連行政機関への報告

9.その他の留意事項等

1.目的
磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:MRI)検査は現代の医療において不可欠なモダリティであるが、検査を行うに当たっては、磁場、ラジオ波や造影剤の影響を充分に考慮する必要がある。そこで、令和2年3月、一般社団法人日本磁気共鳴医学会が公益社団法人日本医学放射線学会等の協力のもと、MRI検査において適切な安全管理を行うための具体的方法が提示された「臨床MRI安全運用のための指針」を設定した。当センターにおいてもこの指針に準じた管理を行うことで、MRI検査がより安全に、精度高く実施され、常に高度な診療に貢献できることを目的とする。
2.MRI 安全管理体制
病院長は、MRI の利用に係わる安全な管理体制を確保するため、MRI 検査を管理するチーム(安全管理責任者・安全管理委員会)を配置し、MRI 安全管理責任者が本指針に基づいて行なう意見具申を尊重しなければならない。また、MRI 診療に携わる者は、MRI に係わる安全の確保するために、MRI 安全管理責任者の指示に従わなければならない。
1)MRI 安全管理責任者
(1)MRI 安全管理責任者の人選
MRI 安全管理責任者は、放射線診断部長が就任する。
(2)MRI 安全管理責任者の業務
・MRI の安全運用のための指針・マニュアルの策定。
・院内の医療従事者に対し、入所時に MRI の安全運用に係る講習を行う。また、入所後 1 年以上経過し、MRI 検査にかかわる可能性がある者に対しても定期的に MRI の安全運用に係る講習を行う。
・MRI の安全運用を目的とした改善のための方策の策定及び実施。
・MRI に関する事例発生時の対応。

2)MRI 安全管理委員会
(1)MRI 安全管理委員会の業務
MRI 安全管理委員会は、MRI の運用に関するマニュアルの策定、プロトコールの管理及びMRIの安全利用を目的とした改善のためMRI安全管理責任者を補助する。

(2)MRI 安全管理委員会の構成
・MRI 安全管理責任者(委員長)
・医師(MRI 安全管理責任者以外に放射線科医師がいればその医師)
・診療放射線技師 若干名(磁気共鳴専門技師がいればその者、MRI 撮像担当者、および放射線診断課技師長)
・放射線内視鏡部門の看護師長、検査に携わる看護師
・その他、委員長が必要と認めた者

(3)MRI 安全管理委員会の開催
MRI 安全管理委員会は、年 1 回定期開催する。その他、委員長が必要と認めた場合に開催する。いずれも委員長が招集する。

(4)MRI 安全管理委員会の議事報告
委員長は MRI 安全管理委員会の議事を病院長及び医療安全管理室に報告する。

(5)MRI の安全性に関する講習会への参加
委員長を含む委員のうちいずれかは、年1回、MRI の関連団体にて、安全性に関する講習会に参加する。(例年4月から5月頃申し込み開始)

また、委員長を含む委員のうちいずれかは、2年に1回以上、MRI 造影剤の安全性に関する講習会に参加する。

(6)作業チームの編成
委員長は MRI 業務の円滑な運営を図るため、MRI 安全管理委員会の下部組織として作業チームを編成することができる。

3. MRI 安全管理マニュアル
当院の MRI 安全管理体制を確保するため、当センターの「安全管理マニュアル」を策定し、MRI 担当技師および他の医療従事者はこのマニュアルに沿って、安全を確保したうえで検査を行う。

  • マニュアル抜粋 1)MRI 検査前の安全管理
    (1)禁忌事項の説明・確認
    ・MRI 検査オーダ時、依頼医が当院の「MRI 検査説明書」(禁忌事項記載)に従いMRI の検査説明を行う。医師補助事務・検査説明担当者が検査について説明を実施する。
    ・MRI 準備室へ患者呼入れ時、MRI 担当技師が再度検査禁忌事項について問診や説明を行う。
    ・MRI 検査室入室時、MRI 担当技師が患者名を問診票・受診票記載の氏名と照合し、再度問診票内容の確認を行う。
    (2)吸引事故防止
    ・MRI 検査問診票(体内外金属、手術歴等)の確認を十分に行う。「禁忌」「要注意」項目に該当する場合、放射線診断医の判断を仰ぐ。
    ・意思疎通不能な患者に対しては、磁性体探知機で全身をサーベィし体内金属の有無を確認する。
    ・MRI 担当技師・看護師以外の者の MRI 検査室入室を原則禁止する。やむを得ず介助等により入室する場合は、MRI の安全運用に係る講習を受けた者に限ることとし、強磁性体のないことを MRI 担当技師が確認し、一時的に入室を許可する。
    ・移動手段が車椅子またはストレッチャー(ベッド)の患者を MRI 検査室内へ入室させる際、検査前室にて MRI 対応(非磁性体)車椅子またはストレッチャーへ移乗させ、入室を行う。
    (3)熱傷防止
    ・患者を撮像する際、両手が体幹部に触れずまた両足が左右の足に触れないよう間隔をあけ、渦電流の発生を抑えるようポジショニングには十分留意する。
    ・MRI 検査問診票の項目内容(体内金属、刺青、貼り薬等)を十分に確認する。
    ・Body コイル・Flex コイルを使用する際、コイルのケーブルが患者の皮膚に直接接触しないよう留意する。
    ・心電同期用もしくは生体モニター用の心電図を使用する際、コードが患者の皮膚に直接接触しないよう留意する。
    (4)聴覚保護対策
    ・検査中の騒音に備え、ヘッドフォンの着用を必須とし、必要に応じて耳栓を患者に装着させる。
    (5)体内植え込みデバイスの対応
    ・当院では条件付き MRI 対応体内植え込み型デバイスのなかでペースメーカー、CRT-D、ICDは、検査不可能。
    ・人工内耳のみ検査可能
    (6)通常操作モードの基準値を超える対応
    ・可能な限りパラメータ調整(TR の延長、スライス枚数の低減、FA の低下)を行い、通常操作モード内での撮影を行う。
    ・正しいコントラストが得られない等の理由でやむを得ず第一水準管理操作モードへ切り替え撮像を行う際は、体内金属の有無、体温調整不能患者であるか否かを十分確認したうえで、一時的に許可し、患者のモニタリングを行う。
    (7)患者のセキュリティ
    ・更衣室で更衣を行った後、貴重品や衣類はロッカーへ収納し、ロッカー鍵は患者本人の同意のもと、検査室内で保管する。
    2)MRI 検査中の安全管理
    (1)検査中の事故防止
    ・すべての患者に呼出アラーム装置を手渡し、検査中に気分不良または異常を感じた場合はアラームを鳴らすよう説明を行い、安心して検査を受けてもらうよう心がける。
    ・救急等の不穏な患者や認知症患者に対して、寝台の体動抑制ベルトを巻き、落下防止に努める。
    (2)患者の状態観察
    ・救急患者や意識レベルの低い患者を検査する際は、患者の状態に応じて、生体モニター(MRI 対応型)にてモニタリングしながら検査を行う。また、モニタリング時は主治医または担当看護師の立会いが望ましい。
    ・閉所恐怖症や体動等の撮像困難な事例に対し鎮静剤を用いて検査を行う際は、生体モニター(MRI 対応型)にてモニタリングしながら検査を行う。また、モニタリング時は主治医または担当看護師の立会いが望ましい。
    ・夜間・休日等、近くに診療放射線技師等がいない場合にモニタリングが必要な患者の検査を行う場合は、当直医または救急担当看護師が立ち会う。 3)緊急時の対応
    ・緊急事態が発生した場合は、CT の操作室より応援のスタッフを呼ぶ。
    ・何らかの処置を行う必要があると思われる場合は、まず検査室から患者を退室させることを優先し、必要時はリカバリールームに移動し処置を行う。
    ・患者の状態が重篤と思われる場合は、読影室の放射線科医師を呼び、コードブルー(4949)を実施 。
    ・MRI 検査室からの退室には、必ず MRI 対応車椅子や MRI 対応ストレッチャーを使用する。また、応援のスタッフに対し、磁場に関しての注意喚起を行う。 4)造影剤使用に関する安全管理
    (1)造影 MRI の検査手順
    ・造影 MRI を希望する医師は、オーダ画面で「造影」を選択する。
    ・造影 MRI のオーダ入力時に「造影剤使用の同意書」が出力されるので、必ず副作用について説明し、アレルギー等の問診を行った上で、造影検査の同意を得て署名していただく。
    (2)造影剤の投与と検査中の状態観察
    ・造影剤投与のための血管確保は、検査問診票の内容、項目および患者氏名の確認後、前室にて担当看護師が行う。
    ・造影剤投与前は事前説明を十分に行い、ルートの閉塞を確認後、インジェクターにて投与する。投与後は監視モニターにて患者状態を十分監視する。
    ・造影剤アレルギー歴のある患者は、診断医と協議上、造影剤を慎重投与する。なお、投与後必要に応じて生体モニター(MRI 対応型)によるモニタリングを行う。
    ・副作用が発生したときは、造影剤副作用対応マニュアルに従い、患者対応および記録を行う。
    (3)検査後
    ・検査終了後、副作用有無の確認を行った後、前室にて抜針を行う。十分な飲水の指示や遅延性副作用についての説明を行う。
    (4)造影剤の安全性に関する情報の周知
    ・MRI 安全管理委員長または委員は、一般社団法人日本磁気共鳴医学会や公益社団法人日本医学放射線学会等の開催する MRI 造影剤の安全性に関する講習会や勉強会の参加により、最新の情報を随時得られるよう努める。
    ・講習会に参加した、委員長または委員を中心とし、MRI 造影剤使用上の注意改訂や副作用の情報の周知を図るため、担当者のミーティングを行う。
    ・造影剤による副作用と思われる重篤な事例が発生した場合は、MRI 安全管理委員会を招集し、発生状況とその製剤について精査する。

4. MRI 装置の品質管理(始業・終業点検表に沿って点検を行い、結果を記載する)
1)安全に MRI 検査が行えるよう以下の日常点検を実施する
・検査室内、機械室内の室温、湿度、冷却水水温、酸素濃度計の確認
・冷却システムの動作確認、液体ヘリウム残量の確認・記録
・エマージェンシーアラームの動作確認
・始業前はファントムの撮像等で画質を確認
・インジェクターの動作確認
・装置の清掃
2)保守点検
・1.5T装置は1回/3か月の保守点検(メーカー実施)を行い、3.0T装置は1回/6か月 の保守点検(メーカー実施)を行い精度を維持すると共に、故障の未然防止に努める。

5. 停電時の対応(停電マニュアル参照)
1)計画停電
・予定時刻の 30 分前までに MRI 装置のシステムをシャットダウンし、冷却装置の電源を遮断する。
・配電盤レベルの電源を遮断し、停電に備える。
・通電後 60 分以降に配電盤レベルの電源を入れ、冷却装置を立ち上げ冷却装置の動作(ポンプ音)の確認を行う。
・冷却装置電源投入 30 分経過後に MRI 装置のシステム電源を入れ、正常に立ち上がったことを確認し、寝台の動作確認とファントムを用いたテスト撮像を行う。
2)予期せぬ停電
・上記の通電後からの作業を行う。
・装置が正常に立ち上がらないもしくはテスト撮像の画像に異常が生じた場合、直ちに装置メーカーへ連絡をとり、点検・修理依頼を行う。

6. クエンチ発生時の対応
クエンチ発生時、患者の救出を第一に行うこと。
・直ちに排気ファンを作動させた上で検査室内から患者を避難させる。
・排気ファンが作動しない場合は酸素濃度計および酸素アラームに注意しながら低姿勢で患者の救出にあたる。(酸素濃度 18%以下は危険)
・患者退避後は検査室内に誰もいないことを確認する。
・火災でないことを当院施設担当 と消防署に連絡をする。

7. 災害時の対応
1) 発災時の緊急的対応
(1)患者の安全確保
発災時に検査中かつ患者がガントリー内にいる場合は、可能な限り早急に検査室外に患者を誘導し、避難体制に入れるようにする。
(2)職員の安全確保
MRI 担当技師は患者の安全だけでなく、応援に駆け付けた患者の避難、誘導にあたる他の職員の安全確保にも可能な限りの注意を払い必要な措置を講じる。
(3)MRI 装置の保全
停電により冷却装置が停止しクエンチを起こす可能性があるため、通電状態だけでなく冷却システム全体の稼働状況を監視する。
2)被災状況の分類
(A)MRI 装置が設置された建物が倒壊・破損し、MRI 装置が使用不能の場合
・まず、現場への立ち入りの危険性について検討し、立ち入り可能であればマグネットが励起状態を維持しているか、クエンチが生じているか確認する。
・磁場が消失していない場合はマグネットに近づかないよう、周囲への立ち入り禁止措置をとると共に警告表示を行う。
・磁場が消失していても余震等により液体ヘリウムが残存するマグネットが二次災害の原因となり得るため、立ち入り禁止措置をとる。
(B)MRI 装置の設置状況に重大な異常が認められる場合
・該当の MRI 装置は使用しない。
・冷却システムの状態を確認し記録する。
・復旧作業が完了するまでの間、立ち入り措置と警告表示を行い、施設内に周知する。
・配電盤レベルで冷却系、MRI 装置のシステム電源を遮断する。
(C)MRI 装置が設置された建物が目立った損傷を受けている場合
・降雨等に起因する漏電、回路損傷の危険性に留意する。
・損傷の状況からクエンチ、火災リスクの程度を評価する。
・検査室内の磁場シールドの損傷を念頭に磁場漏洩に留意する。
(D)建物 MRI 装置に重大な異常は認められないものの、震度 5 弱以上の影響を受け、MRI メーカーによる点検が当面期待できない場合
・クエンチや漏電による火災発生や通電による故障個所の破損拡大等があることを念頭に、緊急性の認められない検査は行わない。
・寝台の動作確認とファントムを用いたテスト撮像を十分に行い、装置の動作異常がないか念入りの確認を行う。
・不測の事態の発生に備え、必要最小限の検査内容とし、十分な人員を充てること。

8. 安全性情報の周知報告
MRI 装置の故障・事故・その他の不具合、及び造影剤による副作用が発生した場合は、危害の発生または拡大防止の観点から、院内並びに関連学会・関連行政機関等へ報告する。

1)院内への周知
院内においては必要に応じて MRI 安全管理委員会を開催し、事例・対応策等を医療安全管理室およびGRMに報告する

2)関連学会・関連行政機関への報告
院内と同様に、必要に応じて MRI 安全管理委員会を開催し、事例・対応策等を「PMDA 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構」「日本磁気共鳴医学会」及びメーカーに報告する。

PMDA 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構

日本磁気共鳴医学会 インシデントレポート

9.その他の留意事項等

1)指針の閲覧対応
本指針の内容について、MRI 検査を受ける者及びその家族等から閲覧の求めがあった場合は、閲覧に応じるものとし、MRI 安全管理責任者、または診療放射線技師等が対応する。

2)指針の見直し
一般社団法人日本磁気共鳴医学会や、公益社団法人日本医学放射線学会等によるガイドライン等に変更があった時、MRI装置の新規導入又は更新の時など必要に応じて指針の見直しを行う。
本指針を見直す際、MRI 安全管理責任者は、診療放射線技師等と協働して、MRIに係る安全管理の体制が確保されていること等を評価する。
附則
この指針は、令和5年4 月1日から施行する。

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